心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 怪我や血に怯えることもない。
 グレイに対して嫌悪ある視線も向けない。

 こんな行動をしても、俺を見る瞳に変化がないとはめずらしいヤツだな……とグレイは感心した。
 
 学校では、グレイが心ない行動をすると誰もが嫌気がさしたような視線を向けてくる。
 こんなにも恐怖や嫌悪のない真っ直ぐな視線は、久々であった。

 少しだけ温かな気持ちになったグレイは、それを振り払うかのように命令をした。


「この傷を治せ」


 そう命令すると、子どもは鉄格子の間から手を出し、グレイの腕の上に自分の両手をのせた。
 傷には触れないくらいの、少し上の位置である。
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