心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「やっぱり純白は譲れませんわよね! 聖女様のドレスといえば純白と書かれておりますし、マリア様の美しいお髪と美しい瞳を引き立たせるにも、絶対に純白ですわ!」
「そうですね! 王宮に行かれた日の純白のドレスも、それはそれはお似合いでとても美しかったです!」
「そうでしょう? 問題は、デザインなのよねぇ。ふわふわの可愛らしいプリンセスドレスにしようか、シンプルな品のあるドレスにしようか迷っているのです」
「それは迷いますね。どちらも素敵ではあると思いますが、セレモニーではどちらが……」
エミリーとデザイナーのルシアンが前回と同じようにキャッキャと盛り上がっている。
丁寧な口調とは裏腹に、目がギラギラと強く輝いている。
特に何かのカタログを見ているわけでもなく、2人とも頭の中でドレスを想像しながら話し合っているため、マリアは全く会話を理解できずにいた。
目をパチパチさせながらおとなしく2人の様子を見ている。
そして、この場でマリアと同じように全く会話を理解できずにいる者がいた。
……グレイである。