心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜

56 エドワード王子は不器用です


 周りを騎士団に囲まれている馬車に揺られながら、マリアはボーーッと自分の真っ白なドレスを見つめていた。

 先ほど、初めてグレイが「かわいい」と言ってくれたシーンが何度も頭の中でリピートしている。
 そんな言葉をもらえたのは、きっとこの綺麗なドレスのおかげだ……とマリアはデザイナーのルシアンに感謝の気持ちでいっぱいになっていた。



 お兄様に初めてかわいいって言ってもらえた……。
 えへへ。嬉しいな。このドレスにして良かった!
 あとでルシアンにお礼を言わないと。



 檻から出てからというもの、エミリーをはじめとする使用人達、それからガイルにレオ。
 優しい人達から可愛いという言葉をたくさんもらってきたが、こんなにも嬉しく感じたのは初めてだった。
 自然と緩んでしまう口元を止めることができない。

 マリアは自分で思っている以上にニコニコとした笑顔で、王宮までの移動時間を過ごしていた。

 1人で王宮へ行く不安も、セレモニーへの緊張も、今のこの幸福感には勝てない。
 のんびり外の景色を眺めていると、いつのまにか王宮に到着していた。
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