心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「では、先ほど見せていただいた治癒の光……あちらを、研究者達に見せてあげることはできますか?」
「……あれでいいの?」
「もちろんです! 皆、とっても喜ぶでしょう! ぜひまた今度王宮にいらして──」
そこまで執事が言いかけると、エドワード王子の声がそれを遮った。
「じゃあ今から行こう! 研究室!」
「……え?」
マリア・執事・メイド達の声が重なった。
突拍子もない王子の提案に、みんな目を丸くして王子を見る。
本気の顔をしている王子に、執事が慌てて現状を説明した。
「い、いえ。今は聖女セレモニーの最中ですし、マリア様もお疲れですし、研究室に行くのはまた今度で──」
「夜のパーティーまではまだ時間あるだろ。それに、聖女の力の研究は国の為になるんだ。少しでも早いほうがいいじゃないか」
「で、ですが、陛下にも何も許可を取っておりませんし、さすがに聖女セレモニーの日には──」
「お前はゴチャゴチャうるさいな! マリア! お前はどうしたいんだ!?」
突然話を振られたマリアは困惑していた。
今日はやめたほうがいいと言っている執事と、早いほうがいいと言う王子。
どちらが正しいのかわからない。
けれど、王子の言葉にマリアの心は揺さぶられていた。