心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 ジーーッと地下を見つめるエドワード王子を見て、もしかして研究室に行ってみたかったのかな? とマリアは思った。
 その願望を叶えるために自分を利用されたのだとしても、全く腹は立たないが。


「じゃあ、行くぞ。足元に気をつけろよ」

「うん」


 ゆっくりと、だんだん暗くなる階段を下りていく。
 地下には、いくつかの扉があったがどれも鍵がかかっている。

 大切な薬品を保管しているからだろうか?
 王子とマリアがそんなことを予想していると、1番奥の扉の前に騎士が1人立っているのが見えた。

 騎士は、エドワード王子とマリアの姿を見て心底驚いた顔をしている。


「エドワード殿下! 聖女様! ど、どうしてこちらに……!」

「マリアを会わせる為に連れてきた。扉を開けろ」

「か、かしこまりました!」


 まだ若い騎士は、手をプルプルと震わせながら自分が立っていた扉の鍵を開けた。
 カチャ……と開いたその扉の奥は、ここと変わらぬくらい暗くてじめじめした雰囲気を感じる。



 ここが、けんきゅう室?



 静かな部屋に足を踏み入れた途端、王子とマリアの足が止まる。

 部屋の半分は、檻だった。
 寒気がするほどの暗く冷たいその檻の中に、人が横になっているのが見える。

 エドワード王子には、暗くて人影しか見えなかったかもしれない。
 しかし黄金の瞳を持つマリアにはハッキリとその人物の顔が見えていた。


「…………っ」


 その檻の中で横になっていたのは、グレイの母親──マリアを虐待していた、イザベラだった。
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