心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜

60 イザベラとの再会


「なんだ、ここ? ……あれは誰だ?」

「…………」


 エドワード王子が顔をしかめながら呟いた。
 マリアはその問いに答えずに、そろそろと檻に近づいていく。

 
「おっ、おい! 近づいたらダメだ!」


 ガシッと腕を掴まれて、マリアの足が止まる。
 しかし、目はずっと檻の中のイザベラを見つめたままだった。

 エドワード王子はチラッと一瞬だけ檻に視線を向けた後、その顔を背けて扉を振り返る。
 異様な空気を感じているのか、どこか緊張してるのが伝わってくる。


「ここは違う場所だったみたいだ。戻るぞ」

「待って」


 腕を引かれたが、マリアはその場から動かないように足にグッと力を入れた。
 エドワード王子は揺らがずに檻を見つめるマリアに気づいたらしい。

 再度檻にいる人物に視線を向けた後、静かに問いかけてきた。


「……知っているのか?」

「うん」

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