心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
エドワード王子が「お前、何言って……」と言いかけたので、慌ててその口を覆う。
突然マリアの手を自分の口元に当てられた王子は、真っ赤になって硬直した。
「……そうなのですね。では、陛下にはそうお伝えしておきますね」
「うん」
全てを悟った執事は、柔らかく微笑みながらそう答えた。
そして、マリアと王子と一緒に地下から戻るなり、急足で陛下の元へと向かった。
研究室へはまた今度。今は、自室でお待ちくださいとのことだったので、王子と先ほどの部屋に向かう。
「なんなんだよ。あの静かな女が、何かとんでもないことをしたのか?」
「…………」
ブツブツと文句を言いながら歩くエドワード王子。
マリアにとっては日常になっていたイザベラとの1年間がとんでもないことだったのかはわからないが、グレイの怒った様子を思い出すとそのままエドワード王子に伝えていいものか悩んでしまう。
怒りん坊のエドワード様だもん。絶対に怒るよね……。
お兄様だってあんなに怒ってたのに。
マリアはすでに機嫌の悪くなっている王子をチラリと見て、説明は全部執事にお願いしようと決めた。