心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「マリア様、ご無事で良かった! 陛下や王子達も、すでに別室に移動しております。マリア様もそちらへ行かれますか?」
マリアは首をフルフルと横に振った。
ぎゅっとグレイの服を掴み、小さな声で……でもハッキリと言った。
「マリア、お兄様と一緒にいる」
「左様でございますか。それにしても、まさかこんな状態になってしまうとは……」
「! ごめんなさい……っ」
マリアが涙目で謝ると、執事は真っ青になった。
慌てた様子で両手をブンブンと振りながら、弁明している。
「いいえっ! マリア様のせいではありませんっ!! 強欲な方々が悪いのでございますっ!!」
マリアを涙目にさせたことで執事を睨みつけようとしたグレイは、必死にフォローする執事を見て思い止まった。
レオはそんな執事の様子を見て、どこか嬉しそうに微笑んでいる。
マリアを大切に扱ってくれてるのが伝わり、内心喜んでいるのだろう。
「そうだ。マリアが謝る必要はない。とにかく、もう少し離れておくか……」
「マリアッ」
今度は、どこからかエドワード王子が走ってきた。
グレイは迷惑そうな顔を隠しもせず、レオは突然の王子の登場に驚き、執事は青い顔でエドワード王子を迎える。
マリアは王子に文句を言われると思ったのか、少し怯えた表情になった。