心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「抱き……つくのは……」

「ダメなの? 嫌いじゃないって言ってくれたのに?」


 ウルウルと涙を溜めた瞳で問いかけると、グレイは「うっ」と言葉に詰まってしまった。
 これでは再会した時と同じである。なんの返答ももらえないまま、抱きつくのを拒否されてしまう。
 
 しかし、マリアはこれ以上どうお願いすればいいのかわからず、グレイの返事を待つことしかできない。


「……わかった」

「え?」


 嫌いじゃないなら、なんでダメなの?
 そのマリアの言葉を聞いて、グレイが真っ先に思ったのは「確かに」という納得だった。

 マリアのことを嫌いなはずがない。
 それなのに抱きつくのを拒否するのはおかしい。
 自分自身でそう結論付けたグレイは、急に真面目な顔でマリアに告げた。


「おいで」

「!!」


 グレイは、マリアが抱きつきやすいように両手を軽く広げている。

 グレイからの突然の許可に、マリアは戸惑いつつもその胸に顔を寄せた。
 細い腕をグレイの背中に回し、ぎゅっと抱きしめる。

 嬉しさと、また引き離されたらどうしようという不安で、心臓はドキドキと速い鼓動を打っている。
 しかし、数秒経ってもグレイがマリアを引き離すことはなく、拒否されなかった安心感でマリアはホッと微笑んだ。



 よかった……!
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