心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「ほとんど泣かなくて……。よく寝ているんです……」

「そうですか。肌が白くて綺麗ですね」


 これはジュード卿からの遠回しの探りであった。
 毎日風呂に入れない、さらには食事すらまともに取れない平民であれば、こんなに綺麗な状態を保つことはできないからである。



 聖女の能力について聞きたい……!



 そんな嫌味に気づかず、単純に赤ん坊の肌を褒められたのだと思ったエマは、浄めの力のことを話した。


「聖女の力なんです。洗ってあげなくても、汚れると光がキラキラ輝いて綺麗になっているんです。赤ん坊も、私も、部屋も……」

「……! そうですか」



 間違いない!! 本物の聖女だ!!
 まさか俺が生きている間にお目にかかれるとは……。
 絶対にこの聖女を俺のものにしてみせる……!



 ジュード卿は眠っている赤ん坊を見つめながら、拳をぎゅっと強く握った。
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