心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

8 ジュード卿の嘘


 ジュード卿が聖女である赤ん坊を見つめて数分後、熱い視線に気づいたのか威圧感に反応したのか、赤ん坊が目を覚ました。

 聖女に関する本に記述されていた通りの黄金の瞳。
 想像以上に美しく輝くその瞳に、ジュード卿はしばらくの間見惚れていた。



 これが聖女の瞳……。まさかこんなにも美しいとは。
 この瞳だけでも、ものすごく価値がありそうだ。



「なぜ生まれてすぐ王宮に聖女の存在を伝えなかったのですか? 聖女であれば、王宮に匿ってもらえるというのに」

「……まずは確かめたかったんです。この子が本当に聖女なのか」

「確かめた? それで、何か確信できることがあったのですか?」


 ジュード卿は、聖女に興味津々であることを気づかれないように、できるだけ落ち着いた素振りをしながら尋ねた。

 赤ん坊は、初めて見るジュード卿に怯えた様子も見せずに、ジーーッと愛らしい顔で彼を見つめている。
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