心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイは隣で眠るマリアを見た。
 昔と変わらない、幼く可愛らしい寝顔。

 しかし、グレイの服の裾を握っているマリアの手は、小さい子どもの手ではない。
 白く細い指。形の整った綺麗な爪。どれも子どもらしさがなくなっていて、マリアの成長が窺える。

 同じ年齢の子どもよりも小さく、成長の遅かったマリア。
 そんなマリアの成長はグレイにとっても喜ばしいことであったはずなのに、最近は素直に喜べなくなっている。

 喜べない……というのも少し違う。
 どうにも胸に感じる違和感を拭うことができないのだ。


「はぁ……酒でも飲むか」


 グレイは寝ることを諦め、本を閉じてサイドテーブルに置いた。
 自分の服を掴んでいるマリアの手を離そうと、その手に触れた瞬間。
 グレイの心臓がドキッと大きく跳ねた。



 ……なんだ?



 マリアに触れている手が、なぜか緊張している。触れてはいけないものに触れている気がして、グレイはその手をスッと離した。
 手を離したというのに、グレイの心臓はいまだにドッドッドッと早鐘を打っている。

 この感覚は初めてではない。
 マリアが久しぶりに帰宅した際、抱きしめられた時にも同じ状況になったことをグレイは思い出した。



 なぜマリアに触れると、鼓動が速くなるんだ?
 これも聖女の力なのか?


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