心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
抱きしめられた時にも感じたこの違和感のせいで、グレイはマリアを引き離し傷つけてしまった。
その原因はマリアの胸に驚いたから……という結論を出したが、今は胸には触れていない。
それなのになぜ、あの時と同じ状況になってしまったのか。
……原因は胸ではなく、マリア自身だったというのか?
いや、とグレイは自分の考えを否定した。
マリアのことを嫌ってもいないのに、触れるのを拒否するとは思えない。
それに、他の女性への拒否感とは全然違うということもグレイはわかっていた。
他の女性に触れられた時には、全身に鳥肌が立つような寒気がして、ひどい時には吐き気がする時だってある。
しかし、マリアに触れた時にはそのような感覚は一切ない。
ただ、感じるのだ。
なんと言っていいのかわからない、意味不明な違和感を──。
「なんなんだ、これは……」
グレイはそう呟きながら、またマリアの手に触れて自分の服から離した。なぜか無性にその手を握りしめたい衝動に襲われたが、それを無視してベッドから降りる。
たったそれだけのことで、グレイは疲弊していた。