心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「言い伝えの通り、月の隠れた日には力を出しませんでした。この黄金の瞳も、輝きがなくなっていたし」

「そうですか。やはり月の隠れた日にはその力を使えないのですね。そして、瞳の輝きと力が関係しているかもしれない……と」



 これは新しい情報だ! 
 瞳の輝きと力が関係しているなんて、そこまで詳しく書いてある本はない!



 心の内を顔に出さないように気をつけながら、ジュード卿は話を続けた。


「それで、今日初めて王宮へ? なぜこの時間に?」

「はい。あの、私……聖女が生まれたことを、誰にも話していなかったんです。知られたら奪われてしまうのではないかと怖くて……。だから昼間に出るのが不安で、この時間に……」


 バカな女だ、とジュード卿は思った。
 こんな遅い時間に突然やってきた平民の女を、王宮が中へ通すわけがない。
 
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