心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 顔を赤らめることもなく堂々と言い放ったエドワード王子を見て、グレイは血の気が引いていくのを感じた。
 マリアとレオの顔が強張る。
 

「……マリアと結婚する?」

「そうだ」


 グレイの冷静な問いにエドワード王子が答えた瞬間、王子の後ろにいたマリアが焦った声を上げた。


「ちっ、違う! まだ承諾してないからっ」


 マリアの声を聞いて、グレイは再度王子に視線を向けた。
 ついさっきまでは全身から力が抜けてしまったような消失感に襲われていたが、マリアの否定する声を聞いてすぐに感覚が戻ってきた。

 少しだけ不機嫌さを含めた声で、グレイは王子に尋ねる。


「マリアは承諾してないそうですが、どういうことでしょうか?」

「俺はマリアと結婚する。絶対にだ。それを伝えに来た」


 グレイの問いに答えているようで答えていない。
 ただ自分の考えだけを告げているエドワード王子に苛立ちを感じつつ、グレイは以前とは違う王子の様子にも驚いていた。

 今までは、マリアの前では顔の赤くなっていたエドワード王子。「結婚」などの単語を言う際には、口がどもっていた照れ屋な王子。
 その王子が、今は堂々と男らしい態度で「マリアと結婚する」と話している。



 これは本当にあの生意気王子なのか……?


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