心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「貴女の名前をお聞きしても?」
「エ……エマです」
「エマ。赤ん坊と一緒に私の家に来ませんか?」
「……えっ?」
エマの茶色い瞳が大きく見開いた。
抱いていた赤ん坊を落としそうになったので、ジュード卿は咄嗟に手を出し赤ん坊を支える。
顔には出していないが、初めて聖女に触れたことにジュード卿は感動していた。
「あ……あなたの家に……? で、でも、聖女は王宮で保護されるのでは……」
「そうですね。聖女は国の宝ですので、王宮で大切に育てられるでしょう。でも、母親であるエマのことは何も保証されていないのをご存知ですか?」
「……え? 私の保証はない……?」
エマの瞳が揺らいだのを、ジュード卿は見逃さなかった。