心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「ええ。大切にされるのは聖女様だけです。母親は……こんなことをご本人に伝えるのは気が引けるのですが……」
「言って! ……ください! 聖女の母親はどうなるんですか!?」
「聖女を産んだ母親は、その身体を調べられたり……その、他にも子どもを産むようにと命令されるかもしれませんね。また聖女が生まれる可能性がありますから」
「何……それ……。身体を調べるなんて……。それに、言っておくけどもう父親はいないの。どこかに逃げてしまったもの。もう妊娠なんてできないわ」
「……その逃げた父親以外にも、男性はたくさんいますよ」
「まさか……妊娠さえすれば相手は誰でもいいということ……? そんな……」
エマの顔は真っ青になっている。
自分に待っている未来を想像して、恐ろしくなっているのだろう。
だが、実はこれは全てジュード卿の嘘であった。