心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 まるで覆い被さられているような体勢。
 無言のままずっと不機嫌そうな顔をしている王子。
 その場から身動きがとれなくなったマリアは、弱々しく王子を見上げることしかできない。



 どうしたんだろう? なんでこんなに怒ってるの……?
 


「……マリア。俺がこの前言った話の意味、まだわかってないだろ?」

「……結婚の話?」

「男として好きになれって話だよ。あれ、逆に言うと俺はマリアを女として好きって意味なんだけど、それちゃんとわかってる?」

「…………」


 この体勢と、怒っているような王子の態度に焦りを感じているマリアは、王子が何を言っているのかすぐには理解できなかった。
 でも『好き』という単語を聞いて、昨日のレオとの勉強会の内容を思い出す。



 もしかして、エドワード様が言ってる『男として好き』っていうのは、レオが言ってた『恋愛感情の好き』と一緒? 
 たくさんの好きという感情の中で、恋愛感情で好きになる相手は1人だけだと言ってた……。
 エドワード様が男として好きになれって言ってるのは、その1人になりたいっていうこと?



 急に黙り込んだマリアを見て、王子が少し身体を離す。
 何かわかったかのような顔をしているマリアに驚いているようだ。



 じゃあ、今エドワード様が言った「私を女として好き」っていうのは、私を恋愛感情で好きっていうこと?
 え? エドワード様って、そういう意味で私を好きなの??


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