心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ほんのわずかな一時停止した時間。
バチッと目を見開いたグレイと、目が合った瞬間に心臓が止まったかと思ったマリアは、お互いしばらく思考が停止していたのだ。
「…………」
グレイはすぐに反応したけれど、マリアはうまく声が出せないままだ。
「え……なんでマリアがここに……って、あ?」
グレイは、自分の腕がマリアを拘束していることに気づいたらしい。
めずらしく困惑した表情をしたグレイは、すぐにマリアの背中から手を離した。
とはいえ、グレイはベッドに仰向けに寝ていてマリアはその上に乗っている状態だ。
手を離したところで、マリアが自分に密着している状態がすぐに解消されるわけではない。
「……マリア?」
両手を挙げている状態のグレイは、なぜか微動だにしないマリアに呼びかけた。
マリアは黄金の瞳をまん丸くしながら、グレイを凝視したまま固まっている。
「マリア? どうしたんだ?」
「…………」
マリアは答えない。
最初こそ不思議に思っていたグレイだが、だんだんとマリアの反応よりも今の状態が気になってきたらしい。
壊れ物にでも触れるように、優しくマリアの背中をトントンと軽く叩く。
「……とりあえず、その……おりてくれるか?」
「……え。……あっ! ごっ、ごめんっ」