心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
突然意識が戻ったかのように、マリアは素早い動きで起き上がりグレイから離れた。
心臓がドクンドクンとうるさいくらいに大きく弾んでいて、少し手が震えている。
まるで全速力で走った後のように、身体中が熱くなっていた。
何これ? ドキドキしすぎて手が震える……!
うまく喋れなくて、声もなんか変になっちゃったし……。
少し裏返ったような声を出してしまい、恥ずかしさからグレイの顔が見れない。
しかしグレイは特に笑う様子もなく、静かに身体を起こした。喉が渇いたのか、サイドテーブルに置いてあったグラスに手を伸ばしている。
「あっ、わ、私がやるよ」
「……ああ」
グレイもどこか気まずそうな声だ。
この薄暗い部屋が、真っ赤になっているであろう自分の顔を隠してくれていることにマリアは感謝した。
グラスに水を注ぎ、グレイに差し出す。
渡す瞬間にグレイの指に触れ、マリアは思わずグラスを落としそうになってしまった。
あ、危ない……!
お兄様がちゃんと持っててくれてよかった。
ゴクゴクと水を一気に飲んだグレイは、空のグラスを握りしめたままマリアに問いかけた。
顔は真っ直ぐ前を向いたままで、横にいるマリアの方を見ていない。
「……俺は、また頭痛で倒れていたのか?」
「うん……。あのっ、薬が無くなってることに気づかなくてごめんなさい」
「マリアが謝ることじゃない」
「でも……」
「それに、もう治ったから大丈夫だ」