心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイの声は聞こえているが、マリアは答えることができない。
 香りがするほどの至近距離にいるグレイ、まだ触れられたままの指、どこか切なそうな優しい声に、マリアは心臓が爆発するんじゃないかと思うほど激しい鼓動に襲われていた。

 ドッドッドッドッ……



 どうしよう……何か答えなきゃ……。



 黙ったままのマリアを見て、グレイは眉を寄せた。
 目元に当てていた指を離し、今度は手のひら全体でマリアの頬を触る。


「顔が赤いぞ? まさか、熱でもあるのか?」



 も、もう無理!!!



 マリアは、自分の頬に当てられたグレイの手をギュッと握って優しく離した。
 これ以上顔に触れられていたら、本当に熱を出してしまう。
 手に触れることも緊張するが、顔に触れられるよりは何倍も心が軽かった。


「だ……大丈夫……」

「……本当に大丈夫か?」


 マリアは視線を下に向けたまま、コクッと頷く。
 まだ鼓動は速いままだし頭も真っ白になっているが、その状態が限界を迎えたからか、頭で考える前にマリアの口が勝手に動き始めた。


「あの、さっき泣いちゃったのも大丈夫なの。お兄様のせいじゃなくて、私が勝手に傷ついただけだし。お兄様のパートナーの方に嫉妬して、悲しくなって泣いちゃっただけだから。だから大丈夫なの。お兄様のせいじゃないの」

「…………は?」


 マリアの怒涛の早口に、グレイの目が丸くなる。
 話は全部聞こえていたが、あまりの早口と想像していなかった理由に頭の理解が追いついていないらしい。


「嫉妬して悲しくなった?」


 グレイからの冷静な問いかけに、マリアはハッと我に返る。



 あれ? 今、私……なんて言った?
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