心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアがその令嬢に嫉妬したのは、ただグレイにエスコートされるのが羨ましいだけだ。
その令嬢に会ったことがあるかないか、自分より優れているかどうかは関係ない。
お兄様……もしかして、勘違いしてる?
マリアはそう思いながらも、とりあえずグレイの質問に答えてみることにした。
「会ったことないし、私より優れたものがあるのかも知らないよ。そもそも、その方が誰なのかすら知らないし」
「じゃあなんで嫉妬なんかするんだ? 相手より自分が劣っていると感じた時に、嫉妬をするはずだ。知らない相手になぜ嫉妬を?」
やっぱり勘違いしてる……。
マリアは、先ほどレオが言った『あいつは底抜けの鈍感男だぞ』という言葉を思い出し、思わずため息を漏らす。
速かった鼓動も落ち着き、今では緊張感よりもグレイに対する呆れのほうが出てきてしまっていた。
「……お兄様。私はそういう意味で嫉妬してるんじゃないよ」
「? じゃあ、どういう意味の嫉妬なんだ?」
「ヤキモチって意味の嫉妬だよ」
「ヤキモチ?」
レオの言う通りだね。
ここまでハッキリ言っても、お兄様は全然気づいてくれないよ。……もう!
「とにかく、泣いちゃったことに関してはもう大丈夫だから! ほら。私ご飯食べなきゃだから、もう部屋出よう!」
「あっ、おい……!」
グイグイとグレイの背中を押して、マリアは部屋から出た。
廊下にはレオとエミリーが立っていて、そんな状態で出てきた2人を見て驚いている。