心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜

89 女3人が集まると怖いです


 マリアの返事を聞くこともなく、フランシーヌはマリアの体調が悪いと決めつけ話を進めていく。


「お部屋を用意させますので、マリア様はそちらでゆっくり休んでくださいませ。こちらのことはご心配なく。わたくしが責任を持ってエドワード殿下のサポートをいたしますので。さぁ、では早速移動を──」

「だっ、大丈夫です!」


 パーティー会場に入って数分で追い出されそうになったマリアは、慌ててフランシーヌの言葉を遮った。
 これくらい大きな声で叫ばなければ、マリアの声は彼女には届かないのだ。

 近くにいる人達からの視線が集まり、やっとフランシーヌは怒涛の早口を止めてくれた。


「……本当に大丈夫なのですか?」

「はい! あの……ちょっと緊張しちゃっただけですから」

「そうですか。ご無理はなさいませんように」

「ありがとうございます」


 あまり表情を変えない冷めた目をしたフランシーヌは、不満そうな空気を発しながらもすぐにその場から離れた。
 おそらく、同年代の女性達からの視線が集中していたからだろう。
 フランシーヌがエドワード王子にご執心なことは周知の事実なのだ。

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