心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「マリア?」


 王子の問いかけに答えられずにいると、今度は横から女性に声をかけられた。


「マリア様、どうかされたのですか?」

「! フランシーヌ様……」


 エドワード王子の婚約者候補として筆頭の人物──公爵令嬢のフランシーヌ様だ。
 少しきつい顔をしている彼女は、偶然なのか必然なのかマリアのドレスと非常に似た色のドレスを着ている。
 王子はあからさまに顔を歪ませて嫌悪感を出していた。


「顔色が優れませんわ。休まれたほうがよろしいのではなくて?」

「あ、あの……」

「お部屋を用意させますわ」

「いえ。あの……」

「ご心配なさらないで。エドワード殿下のエスコートなら、わたくしが代わりに引き受けますわ」

「あのぉ……」


 マリアの返事を聞く前に、フランシーヌはどんどんと話を進めていく。
 エドワード王子のことが大好きなこの令嬢のことが、マリアは昔から苦手だった。
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