心を捨てた冷徹伯爵の無自覚な初恋 〜聖女マリアにだけ態度が違いすぎる件〜

11 マリアとイザベラ


  誕生日の夜、マリアは部屋の中に置いてある檻の中にいた。
 普段はただ部屋の中にいればいいのだが、ジュード卿やエマが不在の時には、万が一を考えられて檻に入れられている。 


 
 逃げたりしないから、ベッドで寝たいなぁ……。



 マリアは檻の中から見えるベッドを見つめて、小さくため息をついた。
 薄い布が敷かれているが、檻の中はひんやりと冷たく、床も硬くてぐっすり眠ることなどできない。

 窓から見える月を眺めていると、バタバタと大きな足音が聞こえ、突然バタン! とものすごい勢いで部屋の扉が開けられた。

 キーズと呼ばれているネズミ顔の執事が、真っ青な顔でマリアの部屋に飛び込んできた。
< 77 / 765 >

この作品をシェア

pagetop