心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「こっちに来い」
マリアは立ち上がって少年の近くにまで行った。
格子にぶつかる手前で、ピタリと止まる。
「動くな」
少年の手が眼帯に触れたと感じた瞬間、眼帯が引っ張られて目の前が明るくなる。
明るいと言っても、月の光しか入っていない薄暗い部屋なのだが、それでも少年の顔がマリアにはよく見えた。
真っ黒な髪色の中に、部分的に輝くシルバーの髪。
パーツがはっきりとした端正な顔立ち。
真っ直ぐにマリアを見つめる碧い瞳。
ちょっとだけパパに似てる……。
マリアはジュード卿を懐かしく感じながら、少年をジッと見つめた。