心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
少年はザックリと深い傷のついた腕を前に突き出し、先ほどと微塵も変わらない落ち着いた口調で命令をした。
「この傷を治せ」
マリアは一瞬迷ったが、格子の間から手を出した。
実は、勝手に誰かを治癒してはいけないとイザベラに言われている。
だがマリアは血だらけの少年をそのままにしておくことはできなかった。
その痛みがわかるマリアだからこそ、すぐに治してあげたいと思ったのである。
力を使うと、いつものようにキラキラと輝く光が溢れてきた。
だんだんと傷が消えていくのが、マリアの目には見えている。
もう少し……!
完全に傷が治ったのを確認すると、ふっと光が消えた。
少年は自分の腕をマジマジと眺めながら、少しだけ嬉しそうな声でボソッと呟く。
「これが癒しの力……!」