君がいない
“男なんて、星の数ほどいるよ”
そんなありがちなセリフを聞いたことはあるけれど。
あたしにとっての『男』は君だけ。
君がいなくなってからも、あたしは君との思い出に包まれている。
今となっては、
胸をしめつけられるだけの思い出。
さっさと抜け出せば、
すっきりするはずなのに。
……涙がこぼれることもないのに、
あたしは敢えて抜け出そうとしない。
君と一緒に討論しながら観た、サスペンス映画。
君と一緒に目を閉じて静かに聴いた、洋楽のバラード。
やめておけばいいのに、あたしはつい、君と繋がっていたそれらに手を伸ばしてしまうんだ。