君がいない
――いつか、君が戻ってくるんじゃないか。
あたしは心のどこかで、いつも淡い期待を抱いていたよ。
君と、君の新しい彼女は、あまりにも幸せそうで。
そこには、あたしと君のあいだに成立しなかった『愛』があったんだ。
彼女が手に持っていた大きな封筒。
そこには、結婚式場の名前が印刷されていた。
彼女の左手に、きらりと光るもの。
それは、将来をともにする約束の証――。
「それじゃ」
君は、呆然と突っ立っているあたしを残して、彼女の肩を抱き去っていく。