君がいない
荷物をまとめる君の背中を、あたしはただ、じっと見つめていた。
その大きな背中には、あたしへの気持ちが微塵も感じられなかった。
のんびりした性格の君。
何をやるにもスローペースで。
あたしにはそれが心地よかったんだ。
慌しく生きる毎日の中で、君のスローな動きは、気持ちも身体も癒してくれた。
なのに……。
いま目の前にいる君は、これまでの君とは大違いで。
驚くぐらいに素早く、荷物をまとめていく。
“早く、ここを出て行きたい”
なにも語らない君の気持ちが、痛いくらいに分かった。