四季くんの溺愛がいくらなんでも甘すぎる!
私をジーッと見て、クッと口角を上げた柳瀬が言った。

「委員長。二年五組の三神シュリ、バツね」

夕凪が柳瀬を見る。
目を細めて、何かを探るような目をしてる。

「先生、いくらシュリがオキニだからっていじわるしすぎですよ」

「草壁、これのどこがいじわる?」

私の首筋をスーッと人差し指でなぞる柳瀬。

バッと手で首を押さえた私を見て、夕凪は肩で息をついた。

「それなら昨日、十分に注意しました。女性としても品を下げるから気をつけるよう、もう一度話しますから。昨日の今日だし…許してください」

「こんなもんは一日じゃ消せないって知ってる草壁もだけど、な。でも三神、消す努力もしてないだろ?」

「なんで…」

「大きくなってるもんな?」

声をひそめて囁いた柳瀬。

自業自得だ…。
言い返す権利はたぶん無い。
 
でも教師としてこんな言動が許されるとも思えない。

「草壁、親友だからってお前も贔屓すんなよ?風紀委員として立場ないことしちゃダメです」

「…すみません」

「じゃ、三神。放課後、指導室な」

「なんで柳瀬先生がっ…」

「なんでって、なんで?」

「先生は風紀委員じゃ…」

「三神、なに言ってんの?前任の先生が二学期から産休だから風紀委員の顧問は俺に代わったって、始業式で挨拶したけど?」

始業式…。

そうだ。あの時は四季くんと皐月くんのことで頭がいっぱいで、式の間ずっと上の空だった…。
言われた今も、そんなこと思い出せないくらいに…。

「ちゃんと来いよ。逃げたら停学です」

「………はい」

風紀委員長が私に一枚のプリントを渡した。
中身はあんまり見ないまま、手のひらで握り潰しそうな衝動をグッとこらえた。
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