エイプリル・ラブ
嘘つきな彼
私の好きな人は嘘つきな人だ。

私が中学の運動会でダンスをすれば
「真実(まみ)ちゃんが1番上手かったよ。アイドルも顔負けだよ」

私が高校に入ってカフェのバイトをすれば
「真実ちゃんが1番笑顔が素敵でテキパキしてる。看板娘になれちゃうよ」

私が大学受験の為に塾に通い出すと
「真美ちゃんただでさえ賢いのに、もっと勉強できるようになったら、ますます素敵で非の打ち所がない女性になっちゃうね」

こんな歯が浮くような言葉を私の目を見ながらスラスラ言ってくるのだ。

そんな訳ないのは自分が1番よく分かっている。
平々凡々を絵に描いたような自分は、本当に普通で平均的な人間だ。


そして大学生になり、20歳を迎えた今日。
彼は今までで1番とんでもなくヒドイ嘘をついた。



「ずっと真実ちゃんのことが好きだったんだ。僕と恋人同士になって欲しい」



その嘘を聞いて私は固まってしまった。
そんな私の心情は意にも介さず、パソコンの画面の向こうで彼はいつもの完璧な微笑みを浮かべていた。
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