造船王はその愛を諦めきれない~その人は好きになってはいけない相手でした~

「凛ちゃん、それじゃあわたし撮影に出ちゃうから、美菜をよろしくね」

「はい。お任せください。雅さんもお気をつけて」

美菜ちゃんも寝てしまった夜の二十二時過ぎ、雅さんは明日の早朝から、遠方で撮影があるとかで出掛けていった。

ここで働くと決めてから三週間後、会社を辞めて、やっと正式に雇って貰うことになった。

辞めるにはもっと時間がかかるかと思ったが、寂しいことにしがない事務にはそれほど引き継ぐ仕事もなかった。

家族にも専属で雇って貰った事を伝えたので、今後は泊まり放題だ。
これまでも単発でお仕事を、させてもらっていたが、改めて気合が入る。

やる仕事もぐっと増えてので、まず、家の間取りと置いてある物の場所を改めて叩き込んだ。

食事はすでに何度もつくっているのが、アレルギーなどには十分に注意することを忘れないようにしよう。

食事には拘りは無さそうで、食材も普通のスーパーでの買い物で問題なし。ノースエリアにはスーパーなどの店舗はないのでサウスエリアまで行かないと行けないが、宅配も利用してくれて良いとのことだった。

家庭料理をとのリクエストを受けているので、今日は青魚、味噌汁、煮物とごく一般的な食事を作った。

美菜ちゃんの舌が肥えていたらどうしようとビクビクしたが、初めての納豆にも、粘りを面白がって喜んで食べてくれたのでほっとした。

朝の仕度を追えたら、午後は家計簿をつけたり、掃除や家の手入れをしたりしている。

家計簿兼報告書だが、買った物、その日の出来事、美菜ちゃんについてなど、記録しておくようにしている。
まずはキッチンへ行って、保存食を作っておくことにした。

時間とタイミングが合わず、家主の弟さんに会ったことがないが、彼の分も食事は頼まれている。
出すたびになくなってはいるので、食べてくれてはいるようだ。

忙しいのなら、一週間ほど冷凍しておけるおかずがあると便利だと思うけど、自分で解凍して食べたりするのかな?

キッチンは四カ所にあるが、稼働しているのは一階の中央付近にある物だけだ。そこで料理をしていると、弟さんが使用している家側の扉が開いた。

「いい匂いだな」

現れたのは、背が高い男の人だった。
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