あたしが好きになったのは新選組の素直になれない人でした

第四話




山南さんに、履いてきたスニーカーを手に持つよう言われたので手に持ったまま縁側を歩く。
正面玄関につくと、山南さんが下駄を履いたので空蒼は持っていたスニーカーを地面に置いてそれに足を入れた。

ここまで移動してきた時間は僅か数十秒ほど。
それなので他の隊士には会わなかった。その方がこちらも有難い。
でも先程の総司の様子から、総司の事が気になるのは確かだ。もう会う事はないだろうけど。
そんな事を思いながら、山南さんが歩き出したので空蒼もその後ろを付いて行く。

(……確か、山南さんと土方さんって関係がギクシャクしているって、漫画で読んだ気がする…)

お互いを大切に思っているはずなのに意見などが合わず、最後は山南さんが色々な気持ちを抱えたまま組を脱走して、最後は総司に介錯される。そんな感じだった。
お互いを大切に思っているのにも関わらず、すれ違いで仲違いをするなんて、土方さんはどんな思いで総司に脱走した山南さんを追わせたんだろうか。そして介錯まで総司にやらせるとは、土方さんは何を考えていたんだろう。
でも、見る限りだと今はまだちゃんとお互い話せているみたい。これがだんだんと悪化すればこのままきっと…。

「…着きました」
「っ……」

色々考え事をしていたら、いつの間にか目的の場所に着いていた。一応、屯所の敷地内なので、ものの数十秒ほどの所にある物置に入れられるみたいだ。
そんなに大きくも小さくもなく、普段から使われているのか、ぼろぼろな感じは見受けられない。
勿論、外側から鍵をかけられる様になっている。

――ガラガラガラッ

山南さんが物置小屋の扉を開けた。

それを見て、空蒼は物置の中を覗き込みきょろきょろと見渡す。
桑やロープ、釘やトンカチなど、家の修理に必要な道具や竹箒、何に使うのか分からない物など、色々な物が乱雑にしまわれていた。

(お…)

すると、左側の奥に丁度いい木の板が置いてあった。

(とりあえず、あれの上に座るか…)

そう思った空蒼は、小屋の中に足を踏み入れる。

「え…」
「……え?」

小屋に入った瞬間、後ろから声が聞こえてきた。
後ろを振り返ると、戸惑った顔をした山南さんがこちらを見ていた。

(…何をそんなに驚いているの?)

空蒼は首を傾げながら聞いてみる事にした。

「えっと…何かいけないことでもしたでしょうか?」

物置に入れって言われてたから入ったのだが、何かいけなかったのだろうか。
それかこの木の板に座ってはいけなかったのだろうか。

「あっ…いや、そういう訳では…」

しどろもどろになりながら、空蒼にそう答えてくれた。
眉毛が下がり、とても申し訳なさそうな表情をしている。山南さんはとても心が綺麗な人なんだろうと一人で納得する。

(あ、ちなみに山南さんのオーラは…)

オーラに意識を集中すると、山南さんの身体を濃い青色のオーラが纏っているのが見て取れた。

(えっ?嘘…)

そのオーラの色に空蒼の眉毛がピクリと動いた。



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