十回目のお見合いは、麗しの伯爵令息がお相手です。
「……フィーナは落ち着いているな」
「え?」
「俺は、このあいだから何かおかしい」
「まあ私から見ても……少々挙動がおかしいですね」
「な、何だと」

 急にフィーナの見合い相手として登場したと思えば、花畑へ行ったり、手を繋いだり、寝不足になったり。熱々のコーヒーを一気飲みして、朝食もとらずにふらふらと出勤する。
 今は目の前で、熱いハーブティーをがぶがぶ飲んだ。これまでのカミロでは考えられなかったことだった。

 正直、少しどころではない。だいぶおかしい。このままではカミロ様の喉が死んでしまう。
 
「フィーナといると、自分を律することが出来ない」
「私といる時限定ですか?」
「そうだ」

 それは彼の中にある何らかの責任感が作用しているものであろうか。フィーナの相手役を全うしようと、そういうものが。

「それでは、私とはあまり居ないほうが……別の方にハーブティーを頼みますか」
「それはだめだ」
「でも」
「お前じゃないと意味が無い」
「そんな……」

『見合い相手』として、二人の時間を持とうとしてくれているのは分かるが、これでは……

 フィーナは次から、程々に冷ましたお茶を持って来ようと学習した。
 この夜も結局、カミロへ肝心なことを聞けないまま終わってしまった。フィーナの心のきしみは、ますます強まってゆくのであった。
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