私に婚約破棄しようとしてきた王子が、階段から落ちて意識不明になりました

4 生き霊のフェリクスがずっとついてきます


「ダメだ……俺は物に触れないらしい」


 そう言うフェリクスの手が、棚に並んだ本を掴めずにスカッとすり抜けている。


「私が持つから大丈夫よ。何か気になる本があったら教えて」

「……なんだかアリエルが親切なセリフを言うと気味が悪いな」

「どういう意味よ!」


 静かな図書室で私の声が響く。
 ハッとして口元を手で覆うと、フェリクスがニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。



 このフェリクスが他の人には見えないってことは、周りからは私が1人で喋ってるように見えるってことよね? 気をつけないと、頭がおかしくなったのだと思われてしまうわ!
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