破滅予定の悪役令嬢ですが、なぜか執事が溺愛してきます

ルーン岬のバカンス

 試験が終わり無事に進級が決定したわたしたちは、長期休暇に入った。

 アデルが故郷に帰る前に4人で旅行することとなったのだが、その行き先が――。

「ルーン岬!?」
 驚いて思わず大きな声が出てしまった。

「うん!」
 リリカが元気よく頷く。今回の旅行の幹事はリリカだ。

「叔母さまがルーン岬リゾートの出資者でね、すっごく豪華なホテルの宿泊券をもらっちゃったの!」
「わぁ! すごいですね!」
 アデルが無邪気に手を叩いて喜んでいる。

 しかしわたしの胸中は複雑で、咄嗟にどんな反応をすればいいかわからないまま固まってしまった。
 ハルアカでも長期休暇のバカンスはルーン岬へ行くイベントが発生する。
 
 今回みんなで旅行しょうという話が持ち上がった時に、真っ先にその行き先が脳裏をよぎった。
 リリカを幹事にしておけばルーン岬にはならないだろうと思っていたのに、なんてことだろう……。
 これもシナリオ強制力なのだろうか。

 ゲームシナリオでは、ルーン岬リゾートの出資者にミヒャエルも名を連ねていて、宿泊券を提供するのはドリスだった。
 ヒロインはドリスが苦手だから誘いを断ろうと思うものの、オスカーも一緒に来ると聞いて迷った末に行くことを決意する。
 それほどオスカーが気になる存在になっていたのだ。
 ちなみにハルアカでは、どのキャラで攻略を進めていても、ここは「行く!」の選択肢しか存在しない。

 そしてルーン岬でさらにあるイベントが発生する。
 その流れを思い返していると、カタリナに話しかけられて現実に引き戻される。

「ドリスさんは、あまり気が進まないようね?」
「ち、違うのよ」
 慌てて否定する。
「ルーン岬は、人気のリゾート地でしょう? まさか行けるとは思っていなかったから」

 リリカに向き直った。
「ありがとう。楽しみにしているわね」
「うん! 楽しみだね!」
 
「ではドラール家の馬車を出しますわ」
「やったー!」
「助かります!」
 カタリナの提案に、リリカとアデルが喜んでいる。

「オスカーを同行させてもいいかしら……?」
 盛り上がっている3人におずおずと尋ねてみた。

 カタリナはおそらく侍女をひとり連れてくると思う。
 女子だけの旅に男性のオスカーを同行させるのは、受け入れてもらえるだろうか。

 ハルアカでは婚約者のオスカーとの仲を見せつけようとしたドリスの思惑が外れ、逆にヒロインとオスカーが急接近するイベントが発生する。
 今のわたしは、この3人の誰かとオスカーが円満にハッピーエンドを迎えてくれることを心から望んでいる。
 だから旅先がルーン岬と決まったからには、なんとしてでもオスカーを連れて行かないといけない。

「かまいませんわ」
「うん! いいよー!」
「もちろんです」
 3人が快諾してくれたことにホッとする。

 楽しみにしていてちょうだい。
 ラブラブイベントであなたたちの恋心に火をつけてあげるわっ!

 
< 45 / 72 >

この作品をシェア

pagetop