君の好きな人になりたかっただけ
私だけが知っている恋心
彼と出会ったのは、高三の九月だった。



「あの、これ。落としましたよ」



朝、イヤホンで音楽を聴きながら電車を待っていると、突然後ろから肩を叩かれた。


驚いて振り向くとそこにいたのは、私と同じ高校の制服を着た人懐っこそうな笑顔を浮かべた男の子だった。


ふわふわの茶髪は、撫でるととても柔らかそうでおばあちゃんちで飼っている犬を連想させた。



「あの、これ…」


「え、あ、私の!ありがとうございます…」



男の子が拾ってくれた柴犬のキーホルダーを受け取り、ぺこりと頭を下げる。



「おーい(じゅん)!なにナンパしてんだよー」
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