合併なんて聞いてない!

꧁ 青藍の王子様꧂

よし、と気合を入れて学校の敷地に足を踏み入れる。

小中と女子校だったため、男子と学校生活を送るのは初めてだ。


「あ、羽衣ちゃん! おはよう!」

「おはよう、瑛美(えみ)

鵜川(うかわ)さ〜ん! おはよう!!」

「あ、清水(しみず)さん。おはよう」


エスカレーター式の学校だったこともあり、見慣れた顔が多い。

瑛美と清水さんと話していると、遠くから視線を感じた。

視線を巡らせてみると、数人の男子生徒の集団と目が合った。


「なに、あの人たち。ずっとこっち見てくるんだけどー」


瑛美がそうぼやいた瞬間、彼らはニヤリと笑った。


「え、なになに。近寄ってくるんだけど!」


2人が私の後ろに隠れる。

そんな、後ろに隠れられたって、私だって男子とどう接すればいいかなんてわからない。


「ねぇ、君、名前なんていうの? 可愛いね」

「あ、あなた達に教える必要あるんですか」

「ははっ。ビクビクしてる。かっわい〜」


絞り出した言葉は軽く笑い飛ばされる。

てか、普通入学式から絡みに来る?


手が伸びてきて、覚悟を決めて目を瞑った時―――


「いってぇな!!」


目を開けると、迫ってくる腕を掴む別の腕が見えた。


「くっそ。またお前か、“いがみ”。ヒーロー気取りで調子乗りやがって!」


“いがみ”と呼ばれた男子に目を向けると、とても綺麗な横顔が目に映った。


「………」

「おい、なんか言えよ!」

「……謝りなよ。嫌がってたじゃん」

「っ、お前……!」


今にも殴りかかろうとしている男子生徒を見て、“いがみ”さんは「ねぇ」と低い声を出した。
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