合併なんて聞いてない!
「初日から問題でも起こすつもり? 別にいいけど、俺のこと巻き込まないでくれない」


顔が整っている事もあってか、その表情はとても冷たく映る。


「お前、なんでこの学校にいるの」


青藍と暁暮―――改め暁藍(ぎょうらん)高校はどちらも県内屈指の進学校だ。

どうして“いがみ”さんがそう言ったのかは安易に理解することができた。


「チッ、調子乗んなよクソが」


男子生徒は大きく舌を打つと、その場から去っていった。


「あ、ありがとうございました」


そう言うと、“いがみ”さんと目がバッチリ合った。

緊張から、つい逸らしてしまう。


「別に。俺が俺のためにやっただけだから。お前が恩義を感じる必要なんてない」


“いがみ”さんは冷たく言い放ち、ふい、と顔を背けて行ってしまった。


「み、見た〜!!? めっちゃかっこよかったんですけど!」


その背中を見送りながら、瑛美がキャーキャーはしゃいで清水さんに話しかけている。


「う、うん……。でも、ちょっと怖かったかも」


清水さんはあくまでも“感謝”しているだけらしい。


思わず視線を落とすと、先程まではなかった黒色のハンカチが落ちていた。

きっと、“いがみ”さんのものだろう。

締まりのない人だな、と思いつつ拾い上げると、私達は玄関ドアに貼ってあるクラス表を見に行く。


私のクラスは1−1だった。

清水さんや瑛美とは離れてしまった。


「えー。羽衣ちゃんとクラス別れちゃった〜」

「で、でも、私は瑛美さんとクラスが同じでとても嬉しいです!」

「わー! 佳代(かよ)ちゃん………!」


ぎゅーっ、と手を握り合う2人を横目に見ながら自分のクラスの名簿に目を向ける。

私は2番。

1番の人は“藺上 緯音”というらしい。

日常であまり見かけない字のせいか、読み方はよくわからない。
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