狂愛〜虎を照らす月〜
19〜深月side〜
岳。


岳が目を閉じたのをチラッと見る。

私を助けに駆けつけた時の、岳の顔が忘れられない。

怒り。悲しみ。焦り。安堵。

いろんな感情が見受けられるそんな顔だった。


特に怒り。


きっと相当、頭に来ていたはず。
相当、焦ったはず。

あの場から離れる時も、無理矢理笑顔を作っていた。
なんとか、私を安心させたかったのだろう。


瞳の奥に、ギラギラと岳の湧き立つ感情が滲み出ていた。




そして、暴れたいと、自分を嘲笑うかのように微笑んだ時の顔も、目に焼き付いている。


兄達や、陸さん達のようにいっその事、ひとおもいに暴れてしまった方が、スッキリしたのだろう。


それでも、私を1人にさせない為になんとか自分を抑えていた。

自分の事よりも、私を優先して、離れないでいてくれた。


岳はそういう人だ。
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