愛のない一夜からはじまる御曹司の切愛
プロローグ





 強烈に惹かれる。そんなことがあることを俺は知らなかった。
 クイーンサイズの大きなベッドの向こうには、きらめく夜景が見える。

 都内でも有数のホテルのスイートルーム。ひとりで眠るのには広すぎると、ホテルの好意にすらうんざりしていたが、こうして彼女を組み敷いている今、感謝するしかない。

「君から誘った。今なら撤回できるけど?」

 本当は今断られても、まったく離せる気などしない俺だが、余裕を見せて笑って見せる。

「しません」

 はっきりと聞こえたその声に、俺は嬉しかったのであろうか? 何も考えたくなくて、それ以上の言葉を聞きたくなくて強引に唇をふさぐ。こんな俺は最低でしかない。それでも俺は。





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