愛のない一夜からはじまる御曹司の切愛
 優しい笑みを浮かべる彼に、微笑んでしまいそうになるのを耐えつつ、私も挨拶をする。私たちの微妙な空気を壊すように、弥生が
「ぱー」と声を上げる。

「弥生、今日はどこに行こうか」
 毎週、今までの時間を埋めようとするように、恭弥さんは私たちをどこかに連れて行ってくれる。

「今日は、水族館にしようか。おさかなさん弥生は好きか?」
 チラリと私に視線を向ける彼に、苦笑しつつ答える。

「わかりません。一度も行ったことがないので」

「そっか、じゃあ、今日はパパと一緒におさかな見ような。咲良もイルカショーとか好き?」
 チャイルドシートに弥生をのせながら、私に問いかける。
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