目の前の快楽に
そのとき教室の空気が変わった


女子の嬉しそうな叫び声が響き渡る


あーーーー


私は湊くんと苦笑いを交わした



“一条くんが来た”



一条くんは湊くんに引けを取らないほどイケメンだ



さらさらノーセットに色白



すっと通った鼻筋にゆったりと構えられた口元



長い前髪の間から覗く切れ目



目元の泣きぼくろが色っぽさを出している



身長もすごく高い



“外見だけは”どこをとっても完璧な彼



姿を見たのは1ヶ月ぶりくらいだ



なんでも、女の人と遊びまくっているらしい



さぞかしうまいんだろーな



私と似たようなもんだ



彼は私の右隣の席



その周りには女子女子女子女子女子女子



みんな派手にメイクして、胸を見せつけている



私も側から見るとあんな感じなのだろうか



ちょっと嫌かも‥



自分のこと棚に上げて何いってんだって感じ



まーでも仕方ないじゃん?



「遥ちゃん?どーしたのーーー」



横から湊くんの明るい声



心配かけちゃったかも



「なんでもないーーー
 なんの話だっけ?」



湊くんは一瞬キョトンとしてほおを膨らませた



ひょっとしたらこの子女子より可愛いかも



「んもーーー!今日の放課後遊びに行く話!」



あぁ



「今日は先約入ってるかも!」



湊くんは何かを察したようにうなづいた



「おっけーーー」



「うわ、今日もやるんだってあの子」



「やっばー」



会話の一部始終を聞いていた女子たちが聞こえるように言う



はぁ



やっぱりいい気分にはならないよね



「遥ちゃん、気にしなくて大丈夫だからね?」



湊くんはなんでいい人なんだろう



女子たちに見習ってほしい



「うん大丈夫!ありがとね」



湊くんは安心したように笑った
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