ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
その日私は、仕事から帰ってきてシャワーを浴びて。リビングでビール片手に、非常~に良い気分でくつろいでいた。

父さんが、見も知らない少年を連れて、目の前に現れるまでは。

「その……母さんが亡くなって、8年も経つのだから良いだろうだなんて、考えたわけではないんだ。
いろいろ込み入った事情があってだな……。
まぁ、つまり、その……なんだ。

──すまない!
お前に謝ったところで(ゆる)されるとは思ってないが──彼と、仲良くして欲しい」

言って父さんは、自分の【浮気の結晶】を紹介した。

進藤(しんどう)大地(だいち)っていいます。高校2年、17歳です」

はっきりとした口調で、にっこりと笑った顔は、くったくがない。

……愛人の子なのに。そう思ってしまう私は、根性悪いんだろーか?

「……佐木(さき)舞美(まいみ)です。よろしく」

それでも愛想笑いを返せるのは、販売職で培った営業スマイルのおかげかな。

我ながら、腹黒い。
だから、29にもなって、結婚にも彼氏(オトコ)にも、縁がないんだろうか、やっぱり。

付けっ放しのテレビから、民放のニュース番組のキャスターが22時を告げる。
今日も冒頭から『児童虐待』なんて言葉が、耳に飛び込んできた。ヤな世の中。

でも、そんな事件や昼ドラチックな出来事も、テレビの中だけのこととして割り切れば、心を動かされるのは一瞬だ──なのに。
< 2 / 115 >

この作品をシェア

pagetop