ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
あー、もうっ。
こんなにウダウダして、支離滅裂になるくらいなら、もっと強固で頑丈な、鉄壁の理性をきずいておくべきだったよ……。

悶々として一向に着替えが進まない私の耳に、メールの着信音が響いた。
───大地からだった。

『ご飯食べて、映画観て行かない?』
だと!? 気楽なヤツめっ……!

こっちは散々っぱら『昨夜の過ち』を引きずって。
いっそ無かったことにしちゃおうかな……なんて、小ズルいことを思いついて。
そんな自分に嫌気がさして……っていう、負のループに陥っているっていうのに!

怒涛(どとう)の後悔の念を、お気楽大地への怒りへと切り替え、ようやく私は着替えを終えた。従業員専用の通用口から、売り場へと出て行く。とたん、電子機械音の洪水に、耳がさらされた。

アミューズメント施設のそこを突っ切って進むと、ベビー洋品店、カジュアル洋品店……と、服飾店が連なっていた。
館内を通じて流れている有線音楽がよく聴こえる頃には、本屋の一角が見えてくる。

大地の居所は、すぐにつかめた。
店内は、雑誌コーナーで立ち読みしている人がほとんどで、文庫コーナーにいる茶髪に白の開襟シャツ姿が目立っていたからだ。

背はそれほど高くないはずなのに
(私が160センチだから……170センチ台前半くらいかな?)
バランスの良い身体つきのせいか、遠目からだと、実際より背が高く見えた。

「あっ、まいさん! お疲れさまー」

声をかける前に私に気づき、大地は手にしていた文庫本を棚へと戻す。
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