ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
欠け始めた月が、頭上から私たちを照らしていた。
少し肌寒さを感じる夜気のなか、つないだ手のぬくもりだけが、やけに心地よくて……だからよけいに、なんだか気恥ずかしい。

いつもは、不必要なほど他愛もないことを話す大地も、黙ったままで。
互いの体温だけ共有して、私たちは何も語らず、歩いていた。

二百メートルほど行った時、ふいに大地が足を止めた。

するりと私から手を離し、小脇に抱えた封筒から、A4サイズの小冊子を取り出す。

「はい。まいさんも、その目で確かめて?」

大地から手渡され「鑑定書」と表紙に書かれた小冊子を、無造作にめくった。

「───大地」

ざざっ……と。冷えた夜風が竹林を揺らして、駆け抜けていく。頬に髪が、まとわりついた。

「……もう、お姉さんって、呼べなくなっちゃったね」

およそ大地に似つかわしくない、感情のない声が、その内容を端的に表した。

『───当病院においての鑑定結果は以下の通り。

鑑定申し立て人・「佐木恭一(敬称略)」と「進藤大地(同)」

両人は、“生物学的親子”では

ない と 結論する。

なぜなら、DNA型の塩基配列(下記資料参考)に、通常、親子関係に見られる一定のパターンの一致が見られず────』

「大地」

もう一度、その名を呼ぶ。呼んで、私は大地を見上げた。淋しそうに、けれど大地は、微笑みながら言った。

「僕たちに、血の繋がりは、なかったんだって。
嬉しい? まいさん。
近親相姦じゃ、なかったんだ」
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