ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛されてます!
「……泣いて……いたの……?」
「うっさいわね!」

両腕をつかまれて思うように涙をぬぐえずにいる自分が、恥ずかしいやら情けないやらで、八つ当たりぎみに大地に怒鳴った。

ふっ……と、目もとを(やわ)らげて、大地が言った。

「なんでだろ……この前は、まいさんの泣き顔を見て、すごく苦しかったのに……今日は、すごく嬉しい。
……あと、笑える」
「人の顔見て、笑ってるんじゃないわよ、バカ! 手、離しなさいよ!」
「ヤダ。まいさんが、僕のさっきの質問にうなずいてくれるまで、離さない」
「信じらんない! ずっとこのまま情けない顔を私にさらさせるつもり!? サイテーな男ね、あんたっ……───」

見事に唇をふさがれて、あんまりにも悔しくて、その舌噛み切ってやろうかと思ったのに。
身体の方が、心よりずっと素直で、大地のくちづけに応えてしまう。
ややして離れた唇が、私の両方の目じりに軽く触れていった。

「……ねぇ、ずっと、一緒にいてよ……」

吐息と共に、耳元で告げられる。返事の代わりに大地の首の後ろへと腕をまわし、その身体を引き寄せた。
抱えた想いを、大地の心と身体に、伝えるために。

「……大地。これだけは、覚えておいて。
私たちは、確かに血の繋がりはなかった。でも私は、あんたが望むもの全部、あんたにあげる。
姉として母として女として……私が与えられるだろう役割(もの)を、全部。
あんたが望んでも、どうしても手に入れられなかったもの、すべてを」

くすっと大地が笑う。背中にまわされた腕と手に、力がこめられる。
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