100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
まだ流されずにいられるのは、周囲の人目を気にしているせいだ。
ザッと見回した限り、知り合いはいないようだが、空港関係者以外の人になら見られていいわけではない。
(こんな場所でキスされるのは困る――ん? 家の中ならいいってこと?)
自分の気持ちに疑問を投げかけている場合ではない。
ククッと笑いながらゆっくりと顔を近づけられ、慌てた和葉は食べかけのサンドイッチを彼の口に押し込んだ。
怯んだ隙に肩から腕を外し、お尻の位置をずらしてひとり分の距離を取る。
(危ないところだった――あっ)
五十嵐が眉間に皺を寄せ、仕方ないと言いたげにサンドイッチを食べている。
残りは四分の一ほどで、失ったものに気づいた和葉は文句をぶつけた。
「最後の海老、食べちゃったんですか? 三尾しか入っていなかったのに。返してください」
「お前が食わせたんだろ」
お返しとばかりにクラブハウスサンドが手荒く和葉の口に押しつけられた。
トーストした厚切りの食パンにローストターキーとベーコン、トマスやレタスなどの野菜が挟まっていて、まだほんのり温かい。
(五十嵐さんが口をつけたところ、食べちゃった……)
恐らく彼はなにも感じていないと思うが、恋愛に不慣れな和葉は照れくさい。
加速する動悸と闘いながら、目を逸らしてごまかすように呟く。
「美味しい。私もこっちにすればよかった」
「取りかえてやる」
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