100日婚約なのに、俺様パイロットに容赦なく激愛されています
わざとこぼされたらどうしようと緊張したが、彼女は普通にサービスをしてくれて、その後になにか言いたげな笑顔で見られた。
『警戒しないでよ。失礼ね。わざとミスをするわけないでしょ』
(ですよね。嶺谷さんが職務に誇りを持っているのはわかっています。疑ってすみません)
『わかればいいのよ。お互い仕事は真面目に頑張りましょう』
思い過ごしかもしれないが、視線を交えていた三秒ほどで、そんな会話をした気分になった。
嶺谷が後列のサービスに移ったので緊張を解くと、流れている機内アナウンスに気づく。
コックピットから乗客への挨拶は通常業務なのだが、声に聞き覚えがありハッとした。
『当機は名古屋上空、高度三万八千フィートを時速八百五十キロのスピードで順調に飛行しております――』
(もしかして、五十嵐さん?)
『現在のところ定刻通り十一時二十分の到着を予想しております。那覇空港周辺の天候は晴れ。現在の気温は摂氏二十三度。最高気温は二十六度の予報が出ております――』
マイクを通すと若干声が変わるので確信が持てない。
那覇便で飛ぶのは明日だと聞いていたため、よく似た声の他のパイロットだろうかとも考えた。
『沖縄にご旅行の方、お仕事の方、帰省される方もいらっしゃると思います。どなた様にも快適なフライトとなるよう努めてまいります。到着までごゆっくりとおくつろぎください』
(やっぱり五十嵐さんだ)
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